第2章 ラブシーン 後編
「そういえばラブシーンのある映画っていつ観られるの?」
家に帰る前に、ふと思い出してナオに聞いてみた。
「えっ、えっとね……」
ナオは言葉につまり、斜め下を見つめた。
この感じ、なんか覚えがあるような……。
ナオがこういう態度するときって……。
「もしかして……、映画の話って、嘘?」
私がそう言うと、ナオはちょっと気まずそうに微笑んだ。
「映画の仕事があるのはホントだよ。去年出てたドラマの……」
「去年出てたドラマって、あの子供向けの特撮ヒーローもの? ベッドシーンなんてあるわけないじゃん」
私がそう言うと、ナオはしょんぼりしてうつむいた。
「ごめん」
「もう、バカみたい」
私がちょっと怒った口調でそう言うと、ナオは心配そうに私の顔をのぞきこんだ。
「怒ってる?」
「さぁ?」
「嫌いになっちゃった……?」
その質問に私はちょっと笑ってしまった。
すぐばれるようなくだらない嘘ついても憎めないのは子どものときから変わらないなぁ。
「嫌いじゃないよ」
「ホント?」
「好き」
「俺も」
ナオは私をぎゅっと抱きしめた。
私は嘘つきでバカでかわいいナオが好き。
私もナオの背中をそっと抱いた。