第1章 GGO
「ほんっと信じらんない!」
シノンは声を荒げ、キリトの胸元に人差し指をトントンと何度も突き立てた。
「あんたが私の前に現れなければ!こんな…こんな思い…しなくてもよかったのにぃッ!」
「落ち着けってシノン」
「ここここれが落ち着いていられると思ってんの⁈」
なだめるキリトを横目に、シノンのボルテージは振り切る寸前だ。
「だとしても、ここは人の目があり過ぎる。場所を変えるか、あっちに戻って話すかにしないか?」
「!!」
周囲のプレイヤーがザワザワと騒ぎ立てる声がやっと届いたのか、シノンはハッと我に返った。そして、恥ずかしさのあまり全身朱色に染まった。
「ろ…」
「ろ?」
「ロ グ ア ウ ト!」
「ちょ、おいシノン!」
キリトの叫びと同時にシノンはログアウトしてしまった。ただ一言、待ってると言い残して…