第2章 ミラクルとハプニング
保健室に駆け込んだあたしは佐川先生にびっくりされたものの、何とか治療を終えた。
「女の子が顔面でボール受けるなんて駄目よ。傷残ったらどうするの?」
「はい。すみません。」
「いいえ。何か試合中に考え事でもしてたの?」
メガネ越しに鋭い視線が向けられた。すべてお見通しと言われている程に。そういえば、目は口ほどに物を言うってことわざがあったっけ…。
「えぇ。ちょっと…。」
「へぇ〜。まぁ、あなたが考えてる程、相手が深刻に考えることはないと思うけどね。」
「へっ?」
「今にわかるわよ!ほらっ、早くいかない試合おわっちゃう。」
「え?は、はい!ありがとうございました!」
ひぇー早く戻らないと!
「頑張ってね。黒蝶ちゃん。」
佐川先生がそう呟いた声があたしに届くはずも無く…
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「遅くなりましたぁ!選手交代でお願いします。」
「凛ちゃん!良かったあ。来てくれて。補欠の私が入ってから点いっぱい取られちゃって…。」
悠里が泣きそうになりながら話すものだから、点差を見てみると…
げっ!15対5て!三倍ですけど?!
「悠里…。大丈夫だよ。この点差必ずひっくり返して優勝してみせるから!悠里の努力は無駄にしない!」
「…うん。ありがとう凛ちゃん。頑張って?」
「頑張るよ!」
そしてあたしは再びコートへ戻った。
けど、正直この点差をひっくり返すのは中々厳しい。
「おい。」
「へ?」
「へ?じゃねぇよ。…傷は?」
「あっ、大丈夫です。お騒がせしました。」
「全くだ。…点差見たか?」
「うん…。」
「お前、スパイク打てるか?」
「打てるよ。」
「よし。じゃ、反撃すんぞ。」
「…了解!」
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「ハァハァ…」
今は20対18…中々点差が詰まらなくなって来た。このままじゃまた離される。何かいい手は…。
その時、佐川先生の言葉が響いて来た。
"あなたが考えてる程、相手が深刻に考えることはないと思うけどね。"
本当にそうだろうか?あたしは最後の切り札にかけることにした。