第4章 したかったこと
あどけなさが残りながらも少し艶っぽい表情。
吸い込まれるように唇を重ねた。
触れるだけのキス。
自分とは違う煙草の香りがした。そしてまた煙草をくわえる。
「俺がまだ15だったらこれがファーストキス。先輩に奪われちゃった」
誘っておいてそんなことを言う。にこにこしてる横顔につられて笑う。
私だって16だったらそうだ。
だけど負けた気がしてそれは言わずにおいた。ちょっと照れてしまうのは気のせい。
「顔、赤いですよ」
その一言がすごく悔しくて
「クロサワ君。もう1回しよ」
耳元で囁いて無理矢理キスをした。
触れるだけじゃない。深い深いやつを。
何度も唇を重ね合わせ舌を口内に入れ歯列をなぞり舌を絡めたところで、持っていた煙草の火が気になり解放してやった。
「大人のキスよ」
いつか見た社会現象まで起こしたアニメの台詞を真似た。
当時は赤いジャケットのお姉さんだと思っていたが彼女が大人のお姉さんと認識しなくなってしまったのはいつからだろう。
「帰ったら続きしてくれるんですか?」
ネタをネタで返すまではうまくいけてるが顔が真っ赤ですよクロサワ君。
「不意討ちにも程があります」
身体が子どもに戻った私達はどうやら気持ちも少し幼くなってしまったようだった。