第3章 思わぬ出来事 side M
目の前に居る少女は一体誰なんだろう。
俺の名前を何度も連呼しているのに俺を俺と認識していなかった。
彼女は昨日一緒に居た女性の若かりし頃に似ている。
似ていると言う言葉では表現できない位だ。
妹か何かかとは思ったもののそうであれば俺と一緒のベッドに寝るはずもないだろう。
彼女は一人暮らしと言っていたし、昨日こんな少女には会わなかった。
飲みすぎたわけでもない。それなのに何が起こってるか、全く理解できない。
とりあえずその少女に服を着るように伝えるととても嫌そうにだが従ってくれた。
明らかに未成年の少女は煙草を吸うとか言い出したので引き止めてみたものの聞く気はないらしい。
昨日脱ぎ捨てたベッドの下に落ちたシャツを羽織る。
少し大きいのか、と思ったもののこれは自分のものに間違いはない。
きっとまだ頭働いてない寝起き状態なのだろう。
少女に言われるがままリビングに向かい今起こっていることを整理しようと思ったところで叫び声が聞こえた。
面倒だと思いながらも俺はこの状況を理解してない。
仕方なくその声の主の元へ向かう。
鏡には洗面台に身を乗り出すようにしてそれを見つめる少女。
そしてその隣には随分と昔の自分が写っていた。
先程の少女と言うのは昨日の女性であり、俺が思った通りあの時の先輩、タチバナアズサだった。