第2章 思わぬ出来事
今は落ち着きを取り戻すために吸った煙草が5本目に入ったところ。
お酒は今6杯目。
まあ、トニックウォーターで薄めたからそんなきつくはない。
だが、お前。いくらなんでも都合の良すぎる展開じゃないの?
「なんかいっつもこっち見てる人いるなって思ってたけどたまに居ないから俺も探してましたよ。
あと貴女が移動教室のときは俺が渡り廊下見てました。
其処までは気づいてなかったみたいですね」
今までのことを整理しよう。
まず、ここは私の部屋である。
そして私はタチバナアズサである。
なぜか子供に戻ってしまったが、ちゃんと社会人だった昨日迄の記憶もばっちりある。
この髪色から推測するに今の私は高校2年生と考えられる。
この色を鮮明に覚えている。
1年から2年に上がる春休み明け、上手く染まらずおかしな色になってしまったのだった。
クラスメイトの友達から1ヶ月くらい馬鹿にされたのをあれから何年もたった今も根に持っているからだ。
そんなことにより、この目の前に居るクロサワコーキは高校1年生。
私が彼を知ったのは私が3年になってから彼が2年の時なので、私の知らない頃の クロサワコーキである。
そして私の思い出の後輩だった。
だから聞き覚えのある名前だったのか。
私の忘れていた名前と言うのが クロサワコーキ それだった。
こいつ、昨日は黙っていたものの私が高校時代の自分を見ていた妙な先輩であることはなんとなく感づいていたらしい。
私と オーナーの話を聞いて、其れが確信に変わったと言っていた。
ということは顔を見て昨日までの私と高校生の私を結びやがった。
私は気付かず本人にあんなストーカー紛いのことをしてたという事実を嬉々として話していたというのに。
高校時代迄はこの辺りで暮らしていたものの大学進学、就職にあわせて遠 くに越したらしい。
「まー、寝て覚めたらこうなったんだ。もう一度寝て覚めたら元に戻るだろ」
私の結論はそんなところに行き着いた。
クロサワはクロサワで色々考えてたが、とりあえずシャワー貸せということだったので貸してやることにした。