第1章 ここから始まった
カーテンの隙間から差し込む光が眩しい。
でも少しまだ寝たい。
今日は土曜日で、仕事はお休みだからもう一回寝るか。
目を瞑っても分かるほどの光を遮ろうと布団を被ろうとした。
「…誰?」
隣から聞こえる声にはっとした。
ああ、そうか。
話の種、結局中途半端だったよな。と思いながら身体を起こす。
「私ですよ。行きずりのタチバナアズサです。クロサワさん」
眩しくて目が開かない。
「タチバナさんのい、妹さん?」
は?本人ですけど。
「何?昨日のこと忘れた?」
クロサワは飲むと記憶を無くす厄介な体質だったのか。まあ、それはそれでよしとしよう。
そう思ってやっと光に慣れた目を開けると其処にいたのはクロサワではなくあの頃教室から何度も見ていた後輩だった。多分。
上半身裸で私の顔を覗き込んでいる。なんという破廉恥な。
「な…なんで?」
確かに会いたいとは思ったさ。
ごっこ遊びしてたことも覚えてる、睡魔の所為でほんの一瞬だったけど。
だけど、本人を連れて来いとは言った覚えがない。
「お、お前、クロサワどうした?クロサワつれ戻して来い!なんなんだアイツ!」
其処にいた、思い出の中では確かこんな感じだった後輩にそう命令した。
そう、命令した。大事なことなので二回いいました。
「は?」
後輩(仮)は頭上に疑問符がいっぱいありそうな顔をしていた。
「俺、クロサワですけど?」
は?君は一体何を言っているのか。