第1章 バイオレンス・オア・トリート
「お菓子をくれ」
「うーん・・・言い方がイマイチだ。やり直し」
「・・・・・・・・・言い方なんて、どうでも良かろう?」
「いや、重要だよ。どうでも良くない。
可愛らしくお強請りしてくれないと、あげられないな」
エルヴィンの意地悪な言葉に頬を膨らませつつも、
エルヴィンが用意しているという高級なお菓子(情報源はハンジ)が
欲しかったので、肉球グローブが嵌められた両手を
胸の前で合わせて上目遣いでエルヴィンを見つめ首を傾ける。
「お菓子・・・頂戴」
どストライクな可愛さにエルヴィンの理性が激しく揺れた。
何だ!そのあざといまでの可愛さはっ!!
これは誘っているのか!?
いや、しかし今までの経験上誘われてはいないだろう。
誘っていないくせに無意識に誘ってくるナナシに
エルヴィンは少し意地悪をしてみたくなった。
「上げないとイタズラでもされるのかな?
君からのイタズラがどういうものか興味があるから、
今はお菓子を上げないよ」
ニッコリと答えるとナナシが絶望した表情で
エルヴィンを見上げた。
ここまで傷ついた顔をされるとは思わず、
「嘘だよ」と言おうとした瞬間、ナナシがポツリと呟く。