第1章 バイオレンス・オア・トリート
―――事の発端は半月程前
ハンジがノックもせずエルヴィンの執務室へやってきて
「耳寄りな情報があるんだけど」と胡散臭い笑みを浮かべた。
最初相手にしていなかったエルヴィンだったが、
「ナナシ関連なんだけどな~」という言葉を聞いた瞬間、
身を乗り出し「どういう意味だ?」と詰め寄ると、
彼女は「今ちょっと研究費が足りなくて~」と
交換条件を出してきた。
汚い手を・・・!と思いながらも、
エルヴィンのポケットマネーから少し出してやると、
ハンジは羽のように軽く口を開いた。
曰く、ナナシは今度のハローウィンで仮装するらしい、と。
ハローウィンでは裁縫が得意な女性兵士が衣装を作る場合が多いのだが、
その中の数人がナナシに「衣装作るんで着てください!」と
頼み込んだらしく彼もそれを了承したという情報だった。
(ナナシとしてはお菓子が欲しいだけだったので断る理由が
無かっただけであるが)
エルヴィンは瞬時に脳内で(残念な方向へ)様々な考えを巡らせる。
ナナシが仮装する(エルヴィンにとっては可愛らしく眼福)
→お菓子を貰いに来る(トリック・オア・トリート)
→お菓子を上げると喜ばれる(その姿が見れるだけで幸せ)
→エルヴィンも参加してお菓子を強請る
→ナナシのお菓子をゲット出来るORいたずらと称して×××
(放送禁止用語)
0コンマで脳内を巡った妄想にエルヴィンは口角を吊り上げ、
その日の内に衣装作りをしている部下の下へ赴き、
自分の衣装もお願いするのであった。