第1章 バイオレンス・オア・トリート
―――翌朝、
自室のベッドで目覚めたエルヴィンが、
いつの間に自分はここに帰ってきたのだろうかと
記憶を辿ってみたものの、途中からぷっつり切れている記憶に
顔を顰めた。
折角ナナシをお持ち帰りして
ニャンニャン啼かせようと思っていたのに・・・っ!
と思った所で、「また、ナナシに攻撃されたのか」という事に気づいた。
自分を瞬殺出来るのはナナシ以外あり得ない。
また、してやられた!と歯痒い気持ちでベッドの上で
ゴロゴロしていると、ふと枕元に置いてある包みに気づいた。
その包みにはカードが添えられており、
それには『お菓子があるからイタズラは許さんぞ』という
メッセージが書かれていて、エルヴィンの頬が思わず緩む。
この文字はナナシのものだ。
・・・という事は。
ガサガサ包みを開けてみると、
美味しそうなかぼちゃのパウンドケーキが入っていて、
エルヴィンはミケのようにスンスン鼻を鳴らしながら
ケーキの匂いを嗅いだ。
そう言えば昨夜はろくに飲み食いせず気絶させられたな、
と思い出しケーキを一口サイズに切って口へ運ぶと、
かぼちゃ本来の甘さと砂糖の甘みが口内に広がり
エルヴィンの幸せ度数を上げる。