第1章 バイオレンス・オア・トリート
暫くすると、エルヴィンはナナシをお姫様抱っこして
背を向けているリヴァイ達に
「ナナシの気分が悪いようだから、私達はここでお暇するよ」
と早口で言って早足に入り口へ向かう。
その刹那―――
ガッという衝撃と共にエルヴィンの身体が床に倒れ込んだ。
冷静さを失くしたエルヴィンの隙を突くのは容易く・・・
その腕からすり抜けるように抜け出したナナシは、
エルヴィンの顎目掛けて強烈な蹴りを繰り出して沈めてやったのだ。
今日はやたらとエルヴィンに意地悪ばかりされているな
という思いからの蹴りである。
周囲にいた兵士達は一体何が起こったのか理解出来ず固まっていたが、
すぐに状況を察した幹部達は溜息混じりにエルヴィンへ歩み寄り、
怪我の具合を診る。
「顎に一撃とは流石だな・・・」
ミケが感慨深く呟くと、リヴァイとハンジは同時に頷いた。
「あの状況からどうやって逃げるのかな~?って思ってたら、
まさか猫の真似しながらエルヴィンを煽るなんてね~」
「それに簡単に引っ掛かったエルヴィンもエルヴィンだ。
チョロすぎるだろ」
ハンジが笑い飛ばすと、
リヴァイはハッと嘲笑うように吐き捨てる。