第1章 バイオレンス・オア・トリート
エルヴィンの膝の上に居ながらも、
ナナシは自分の所にやってくるお菓子交換希望者に
お菓子を渡していた。
エルヴィンの顔色を見ながら恐る恐るやってきて、
お菓子交換するとすぐに去っていき
ちょっと離れた場所から二人を見守るというスタンスを取る者が多い。
ナナシはそんな彼らを不思議に感じ
「自分は嫌われているのか」と思っていたが、
元凶が今椅子になっている男だとは考えてもいなかった。
エルヴィンはお菓子交換に来る兵士達を目で
威嚇するように見つめていた。
女性兵士にはナナシとの情事を思わせるような
色っぽい流し目を使ったりと、臨機応変に手段を変え
邪魔者を排除していたのだが、
それはナナシに気づかれないくらい巧妙なものだった。
無駄にその才能を使うなよ、とリヴァイ達から冷たい視線を
向けられていたが、エルヴィンは全然気にしない。
用意していた最後のお菓子を配り終わったナナシは、
今度こそエルヴィンの上から退こうとしたが、
またしてもそれを抑えられ振り返るとエルヴィンは
とても綺麗な笑顔を浮かべながら
「トリック・オア・トリート」と耳元で囁いてきた。
お菓子はエルヴィンの目の前でたった今終わっただろうに・・・と
睨みつけると、彼が
「お菓子が無いならイタズラをさせて貰おうかな」と笑ったので
「イタズラする為に自分が用意していたお菓子が尽きるのを待っていたのだ」と
瞬時に悟ったナナシは顔面蒼白になる。
すぐにエルヴィンの手が怪しく身体を弄り始めたので暴れたのだが、
すぐに彼によって抱き竦められ押さえ込まれてしまった。