第1章 バイオレンス・オア・トリート
不毛な言い争いを始めたエルヴィンとリヴァイに
周囲は唖然とする。
普段お堅くて恐い印象を受ける二人が今だけは子供に見えて、
団長も兵長も自分達と同じ人間なんだとそこかしこから笑いが零れた。
部下達の目の前で子供のような口論を始めた二人に
ミケが仲裁に入ると二人は渋々引き下がり、
エルヴィンはお菓子を食べようとしていたナナシの身体を
ひょいと持ち上げて自分の膝に乗せた。
「ナナシ・・・リヴァイにいじめられた私を慰めてくれ」
「私はさっきお主にいじめられた・・・」
「意地悪をした事は謝ろう。
その代わりお菓子をあげるから機嫌を直してくれないか?」
ほら、あーん・・・と、チョコバーを口許に近づけられ、
ナナシはどうすべきか思案する。
エルヴィンが差し出してきたのは限定品のチョコバー。
先程の意地悪を帳消しにするだけの値打ちはあるか、と
結論付けて素直にそれを口に含むとエルヴィンの身体が
プルプルと小刻みに震え始めた。
何を震えているのかと見上げると、
彼は口許を手で覆いながら顔を赤くしていて
どうしたのだろうかと首を傾げる。
体調が悪いなら膝から降りねばと思って退こうとしたが、
それを察したエルヴィンによって阻まれた。