第1章 バイオレンス・オア・トリート
「ほら、ナナシ。君のために用意した高級チョコレートバーだよ?
これが欲しければこちらへ来なさい」
ピクッと大きく反応したナナシは、
エルヴィンが差し出したチョコレートバーの箱を凝視した。
エルヴィンの持っているお菓子は、
手に入れるのが困難で数カ月前から予約していないと
手に入らないという限定品だった。
ナナシはフラフラと吸い寄せられるように、
エルヴィンの箱を目指して歩を進めたが、
リヴァイにグイッと腕を引かれて立ち止まる。
「ナナシ・・・俺が貰った菓子の中に限定品があったぞ。
これ食わせてやるからあんな狼の所に行くんじゃねぇ。
てめぇが食われるぞ」
ナナシはリヴァイの手の中にある限定品のクッキーを見て、
フラフラとリヴァイの下に帰っていく。
エルヴィンは内心舌打ちして「ナナシ!」と引き止めた。
「正気になりなさい!私は他にもキャンディーを付けよう!
大体リヴァイ!それは誰かから貰ったものだろう?
貰ったものを人に上げるんじゃない!」
「てめぇの言う事は正論だが、
てめぇだって貰ったもん売っぱらってんだろ!?
この菓子をくれた連中には後日詫びを入れに行く」
「謝れば良いという問題でも無いだろう!?
兵士長ともあろう男が子供みたいな真似をするな」
「ガキはてめぇの方だろうが!
俺にこんな格好させやがって、てめぇはワイルドに狼男だと?
ふざけんな、クソが!!」
「似合っているんだから良いじゃないか!」
「あぁ?馬鹿にしてんのか!?」