第1章 本編
俺は思わず咳込んだ。
「な!?お前…そんな急に…」
「食べているパン」
「…は?」
「だ~か~ら~!岳人が食べているパンが好きなの!」
どうやら、俺の早とちりだったようで、ちょっと照れた…
「どうかしたの?」
「な、何でもねぇ!」
「…?」
(変な言い方しやがって…紛らわしい!)
俺はパンを食べながら、不二子を睨んだ。勿論、ただ悔しいだけなのだが…
「あ、そろそろ昼休み終わるね」
「もうそんな時間か!?ヤッベ!」
俺は急いで立ち上がった。
「じゃあ先行くぜ?またな!」
俺は一目散に、階段を駆け下りた。
「おっさきぃ~」
「あ、おい!不二子っ!」
不二子は俺を抜き去り、いつしか階段を下り切っていた。
「何なんだよ…」
俺は腑に落ちないまま放課後を迎えた。
「なぁ侑士?」
「何や岳人?どないしたん?」
「不二子って知ってるか?」
「不二子?知っとるで?」
「不二子って何なんだろうな…」
俺は突如質問を投げかける。
「可愛いやっちゃ、不二子は。岳人には勿体無いわ~」
「んな!そそんなんじゃねぇヨ!」
「まぁ岳人は高嶺の花より現実を見ることやな」
忍足はニヤニヤと笑いながら俺を見た。
「だから、そんなんじゃねぇって!不二子は帰宅部だろ?なのに俺より体力あるんだぜ?」
「岳人が体力ないんとちゃうか…?」
「体力がないのは認めるけどよ~…帰宅部には負けない体力あるぜ?」
「まぁ鍛えるしかあらへんな。俺、今日は用があるから先に帰るわ。ほな」
忍足は俺に背中を向け、ひらひらと手を振りながらその場を立ち去った。
「…不二子って何なんだろうな…」
俺は制服に着替えて、部室を出た。