第10章 広がる出会い
「ねえねえ、コレどう?」
「あ、可愛いね」
「じゃあこっちは?」
「うん、似合うよ」
「それともあっちの方がいいかな」
「・・・いいんじゃない?」
「んー、でもソレも捨てがたい」
「・・・・・・」
絞るどころか候補はどんどん増える。かれこれ30分はこの調子で、一向に決まる気配はない。
私なんてそっちのけで服とにらめっこ状態の麻乃は、彼とのデートの為に必死。
「よし、二択にしよう!赤と青、どっちがいいと思う?」
「赤」
「え〜・・・そう?んー・・・・・・いや、やっぱ青にする!」
・・・じゃあ最初から聞くな!!
「あはは、ごめんって(笑)。飲み物奢るから機嫌直して」
「いいよ、そんなの。可愛いの買えてよかったね」
「うん!やっぱ彼の好きな青がいいなって思ってさ」
・・・だから、だったら私に聞く必要ないじゃんか!!
「あ、ついた。ここだよ」
美味しいお店知ってるんだ、と麻乃が連れてきてくれたのは・・・
「・・・・・・え・・・?」
「あれ、その反応だともしかしてともみも知ってた?本当美味しいよね、ここ。外観はお洒落な上に料理の種類も豊富だし。よく家族で来るんだ」
「そ、そうなんだ・・・。でも、このお店イタリアンだよね?お茶するだけなんだし、ここじゃなくても・・・」
「まさか、ここのコーヒー飲んだことないの?勿体無い!!だったら尚更入ろう!」
「え、ちょ・・・えぇ!?」
押されるように入った店内は・・・うん、相変わらず、素敵です。
「ご注文は?」
「私はブラックで。ともみは?」
「あ、私はカフェオレで」
見渡す限り、どうやら私が心配するようなことはないよう。
・・・そんな、いつもいる訳じゃないもんね。
「どうしたの?そんなキョロキョロして」
「う、ううん、何でもない!」
ホッと胸を撫で下ろした私は、心置きなく麻乃との会話を弾ませた。
「そのDVDなら私持ってるよ。ねぇ、今日泊まっていきなよ、一緒に見よ!」
「え、いいの?やったー!泊まるー!見るー!」
「・・・お待たせ致しました、ブラックをご注文のお客様」
手を挙げた麻乃の前に、店員さんがコーヒーを置く。
そして
「カフェオレをご注文の、“ともみ様”」
「・・・・・・」
まさかの事態です。