第10章 広がる出会い
「ともちゃんも俺のこと史って呼んでね」
「は、はい・・・」
「史くん、コイツかなりの人見知りだから、あんま刺激しないでやって」
「え、もしかして・・・ともちゃんって功の彼女?」
「「違う」」
「おー、ハモった(笑)」
琇と悠輔の即答のハモりに豪快な笑いをみせる史哉。きっとムードメーカー的存在なのであろう彼は、笹倉兄弟に比べて表情が豊かなのが印象的だった。史哉は壁がなく年下の功平達もタメ口だし、人見知りの私も自然に話せるようにリードしてくれた。
「ともちゃん、こいつらに何かされたらすぐに連絡してな。あ、別に何もなくても連絡してくれていーからね」
「慣れてるなー、史くん」
「悠・・・恐ぇーよ、その目。お前まだ中学生だよな?ダメだぞ、そんな目で人を見たら」
「大丈夫、史くんにしかしないから」
「・・・お前ら兄弟って、俺のことどんな風に思ってんの・・・?」
終始会話の絶えない食事でとにかく笑いっぱなしだった私は、お腹も気持ちも満足。
そんな食事が終わると会計がまさかの琇と史哉持ちで、自分の分を払わせて欲しいとどんなに頼んでも受け入れて貰えず、結局奢って貰うことに。
「あ、あの・・・すみません、私の分まで・・・」
しかも初対面なのに・・・と史哉の元へお礼を言いに行くと、いいのいいの!と彼はニカッと笑ってくれた。
「つーか、ともちゃん良い子だね、わざわざお礼言いに来てくれるなんて」
「そんな・・・」
「奢って貰うのが当たり前って感じの子もいるし、こうやってお礼言って貰えると何か嬉しくなっちゃうね」
逆にありがとう、と何故か奢って貰った私がお礼を述べられた。
軽やかな口調に惑わされそうだが、絶対いい人。それはこの短時間でも十分に理解できた。
「史くんって、いい人だね」
史哉と別れ、帰りの車内で言わずにはいられず口にすると、ギョッとした顔が複数私に向けられる。
「な、何?」
「いやいや、何?じゃねーだろ」
「俺らには散々時間かけてやっとなのに、史くんって・・・」
「よし、呼び捨て強制な」
「えぇ!?」
満腹になり熟睡する陽太と竜以外の3人からとんでもない要望が。これは到底断れる雰囲気ではない。
「・・・頑張ります・・・」
また新たな試練が課せられました。