第8章 まさかの展開
「ほら、案の定」
悠輔の部屋に入ると、掛け布団を引っ張りながら、まさに半泣きになっている陽太がいた。陽太がどんなに叩こうが何しようが、悠輔は布団を頭まで被って完全無視状態。
「こいつ、朝が物凄く弱いんだよ」
「へぇ・・・」
「ほら、起きろ」
功平が掛け布団を剥がそうとするが、ガッシリ掴まれており全然めくれない。よっぽど起きたくないみたい。
「・・・ともに見られてんぞ」
呆れたように呟く功平の言葉に、ついに悠輔が顔半分を覗かせた。功平の言葉が本当だと分かると、マジかよ・・・と、また布団に顔を埋める。
「悠輔くん、おはよ」
「・・・はよ」
「琇さんが朝ご飯用意してくれたから、食べよ?」
「・・・んー・・・」
先程の功平とは打って変わって、悠輔の目覚めは本当に悪い。
衣奈にそっくり。
「ま、その内起きてくるだろ」
ベソをかいている陽太の頭を撫でて宥める功平。あまり煩く言うと不機嫌になることは妹で十分に理解しているので、私は頷いて功平達と先にリビングに行くことにした。
先に朝食を頂くことにして皆で食べ始めてから数分後、のそのそと悠輔が階段を降りてきた。私の隣の席に座ると、ボーッとしたまま食べ始めた。
「悠くん、ここ、付いてるよ」
「・・・ん」
まだ寝ぼけている彼は、私が指摘した口端をゴシゴシと拭った。昨日ここへ連れてきてくれた頼もしい印象の悠輔くんは、今朝は何だか子どもっぽい感じ。
悠輔は眠そうな目をシパシパさせながら残りの朝食を食べ終えた。その後は陽太や竜と遊んだり、琇達とテレビを見たりして過ごした。
「姉ちゃん、昨日どっか行ってた?」
夜になると言っていた妹が15時過ぎに帰って来た。昼前に帰って来ておいて良かった、と心底感じた。
「・・・何で?」
「昨日家に電話したけど出なかったから」
「あ、麻乃とね、ちょっと会ってたの」
「ふーん?まぁ、それなら仕方ないか」
まさか他人のお宅・・・ましてや笹倉家にいたなんて絶対言えない!
どんなに口の堅い妹でも、今回のことはやっぱり言うのは恐い。バレないかと怯える私は、衣奈の鋭い目から逃れるように夕飯の支度に取りかかった。