第8章 まさかの展開
「・・・随分賑やかだな」
「あ、功平くん!お帰りなさい、お邪魔してます」
「ただいま」
いつの間にか帰って来た功平が、私達の後ろにのっそりと立っていた。こんな所で何してんだ、という彼の呆れたような言葉で、ずっとリビングの入り口に立っていたことに気付く。
「つーか何、呼び捨てすんの?」
「え、聞いてたの!?」
「聞こえたの」
どうやら、琇が呼び捨てで呼んで欲しいという話の所で帰って来たらしい。
「で、でも呼び捨てなんて・・・」
「えー?でも、おれのことは“ようた”ってよんでくれるもんねー、ともー!」
よ、陽太ー!!余計なことを・・・・・・
「そ、それは・・・陽太は年下だし、」
「俺もだけど?」
不機嫌そうに訴えるの悠輔の目は本気。怖い。
「こらこら、さっき年上とか年下とか関係ないって言ってたでしょ」
「・・・・・・」
案外根に持つタイプであることが発覚した琇。
「じゃあ、全員呼び捨て決定だな」
「・・・私の性格分かってて言ってる?」
「慣れと勢い」
「・・・・・・」
「その顔だと、覚えてるみたいだな」
ちょっと前に功平に教えて貰った言葉。あの時は面接練習に付き合ってくれて、私の欠点と解決法を教えて導いてくれた。忘れる訳がない。
「・・・が、頑張ってみるよ」
「ん」
頑張れと言いはしないが、ニッと笑う功平に背中を押される。そんな私達の会話の意味が分からない琇や悠輔は、何だろうと顔を歪ませていた。
残りの準備を皆で終え、私と功平の受験合格祝いを笹倉兄弟揃ってしてくれた。今まで祝い事は家族と過ごしたりするのが当たり前だったから、何だかとても新鮮で楽しくて・・・嬉しかった。
「あー楽しかった!ご馳走も美味しかったし・・・幸せ」
「喜んで貰えたみたいで良かった」
街頭がないと見えづらい暗さの18時。久し振りに功平に駅まで送って貰っている。
「笹倉家は皆料理上手なんだねー」
「人並みだよ。男の料理だから適当だし、台所は汚くなるし」
「あはは、確かにキッチン回り凄かったね(笑)。でも、味は本当に抜群だよ!」
「そりゃどーも」
「功平くん作ってないけどね」
「まーね、前作ってあげたけどね」
「まーね」
そんな他愛もない話をして、笑いあって歩く。