第7章 すれ違う気持ち
あれからも絶えず連絡はとっていたが、私の一方的な考えで何だか会うことに躊躇いがあった。バイトをしたことがない私には分からないけど、やっぱり働くっていうのは大変なことなのだろう。そう思い始めると、何だか自分が邪魔してるみたいに思えた。
[次の土曜日、あいてる?]
そんな時、誘いを持ちかけてきたのは悠輔。たまたま好きなものが一致し、話がかなり盛り上がった。
(悠輔くんはバイト・・・してないもんね)
会って話すだけならお金もかからないだろうし、と誘いを受けた。
「それなら俺ん家に移動する?DVDとかもあるし、ともも楽しめると思うし!」
約束の土曜日、駅前のファミレスで予想以上に盛り上がってしまった私達。普段ならこの誘いに躊躇うことなくお邪魔する所だけれど、今日は素直に頷くことが出来ない。
「あれ、来たくない?」
「う、ううん!そういう訳じゃないんだけど・・・」
「じゃあ、行こうよ」
「えっ、ちょ・・・」
半ば強引に腕を引かれてファミレスを出る。変にどぎまぎする私とは裏腹に、彼は楽しそうに歩く。
「・・・ねぇ、秀さんと功平くんは?」
「秀兄はいるけど、兄貴はいないよ」
「・・・バイト?」
「うん、そう」
やっぱり、大変なんだ・・・。そう思うと、何となく足取りも重くなる。
「・・・兄貴と喧嘩でもした?」
「え・・・?」
「さっきから気まずそうじゃん」
「そ、それは・・・」
ジトーっと見てくる悠輔に耐えられず、私は正直に今の気持ちを話してみた。
「考え過ぎだと思うんだけど・・・」
「でも、バイトで疲れてるのにって思っちゃって・・・」
「それは秀兄に聞いた方がいいかもなー。・・・ただいまー」
話の流れといいタイミングで家に着いた私達の元に、これまたいいタイミングで顔を覗かせたのは秀。
「おかえり。・・・お、ともも一緒か!いらっしゃい」
「・・・お邪魔します」
眠った竜を抱いた秀は、玄関に上がった私の頭をポンポンと撫でてリビングに通してくれた。優しい大きな手に、どこか少しホッとした。