第7章 すれ違う気持ち
「ところで最近どうなの?」
「・・・何が?」
「あのイケメン兄弟達と」
・・・絶対こうなると思った。キラキラ目を輝かせる麻乃は止められない。
「別に何もないよ」
「嘘〜、何もない訳ないよ」
「・・・何でよ」
「だって兄弟揃って文化祭来てたじゃん!」
「だからあれは・・・」
来年の入学者に送られた招待状の存在は麻乃にも話したはずなのに、それでも疑ってこうして度々問い質される。これだから麻乃に本当のことを話すのを躊躇う。
「ふーん、本当に何もないの?」
「・・・ない」
「なーんだ、つまんないのー。ってか勿体無い」
何だつまんないって、何だ勿体無いって!どうして何でもかんでも恋愛思考・・・!?
「凄い仲良さそうだったのに」
「・・・私?」
「うん。無関係って感じの雰囲気じゃなかったもん」
麻乃の言い方は少し気になるけど、どうやら私が思っていた以上に周囲からは私と笹倉兄弟は相当仲良く見えていたらしい。確かにいい関係を築かせて貰ってるし、私も自然と心を開いている。
「まぁいいや。でも何かあったら教えてよね!」
あっという間に昼休みも終わり、風のように去っていく麻乃。何かって、何・・・?まぁそれがどうであろうが、今の所誰かに話せるようなこともないし。だから話さないのも話せないのも事実。そしてもう1つの理由は・・・話してしまったら、せっかく築いた関係がなくなってしまいそうで。
「あれ、今日もてっきり遅いかと思ってた」
「・・・そんないつも寄り道してくる訳ないでしょ」
「してるじゃん、いつも」
帰宅すると、既に学校から帰ってきてリビングで寛いでいた衣奈が珍しいと私を見上げる。
「・・・失礼な」
「だってそうじゃん」
「・・・・・・」
中学生の妹に言い返せない私って何て情けない・・・。でも衣奈の言ってることに間違いはない。
「姉ちゃん最近楽しそう」
「え、そう?」
「良かったね、良い人達に会えて」
応援するからね、という最後のよく分からない言葉は聞かなかったことにして・・・衣奈は優しく笑っていた。
「衣奈も会ってみようよ」
「・・・やだ」
「さっき良い人達って言ってたじゃん」
「そういう問題じゃない!」
私以上の人見知りの衣奈にも、いつか笹倉兄弟と会ってほしい。