第4章 対面そしてご挨拶
そんな彼が予定変更と言って私を連れてきた場所・・・それは、
「おれんちー!」
俺の家、という陽太の高らかに発せられた言葉の如く、見るからに一軒家であり、表札には“笹倉”の文字。
「ちょっ・・・えぇ!?」
「多分この時間帯じゃ何処も人でいっぱいだろうし、予定を変更して家で食おう」
考えれば分かることなのに、本当ごめん。と眉毛を下げて謝る彼に言い返すことなんて出来ず、2人に背中を押されるようにして中に入った。
「わ、私、手土産も何も・・・」
「そりゃそうだろ、突然なんだし。それに、そんなのいらねーから大丈夫」
「で、でも・・・」
「いいから早く上がれって」
玄関先で止まり、中に入ることを躊躇する私をグイグイ押す彼。陽太もはやくはやくーと私を急かし、やむなく上がらせて貰った。
「・・・お邪魔します」
「誰もいないから。陽太とリビングで待ってて」
何でこんなことに・・・と戸惑い、緊張真っ只中の私をよそに、誘導されるように洗面所で手を洗ってリビングに通される。見た目からして大きな家ではあった。ただ失礼ではあるが・・・室内は少々散らかっているよう。
「あーごめん、適当に座って。男だけの生活だから散らかってるけど」
「・・・そうなんだ」
男だけの生活。何となく、気まずさが生まれる。・・・私、本当にお邪魔して良かったのかな・・・?
「あ、私も手伝うよ!」
気づけば彼は冷蔵庫を開いて調理に取り掛かろうとしており、私も駆け寄る。それに続いて陽太も付いてくる。
「いいって。誘ったのは俺なんだし、ゆっくりしてよ」
「そんな・・・」
「いいから、な?」
陽太に話しかけるような彼の言い方に、つい素直に頷いた。それに満足したように笑った彼は、陽太に同じように話しかけた。
「陽太、せっかくだからともに遊んで貰え」
わーい!と、子どもらしくはしゃぐ陽太は、私を再度リビングに連れていく。ここに座ってと示された椅子に座ると、陽太は嬉しそうに隣に座った。
・・・ていうか今日初めて、名前、呼ばれた。
そしてついに出来上がった彼の料理がテーブルに運ばれた瞬間、玄関が開く音が聞こえた。