第1章 日常へのちょっとした変化
「え、今日部活ナシ?」
テストを午前中に終えて麻乃と部室に向かうと、中には数人の部員達が弁当を食べている所だった。皆の話によると、顧問の都合で今日の部活はなくなってしまったということらしい。じゃあ弁当だけでも食べていこうと麻乃が腰を降ろそうとした瞬間、私は彼女の腕を掴んで引き止めた。
「どうせだったら駅前の公園で食べようよ、今紅葉も綺麗だしさ」
「あ、それいい!前から行きたいと思ってたんだよね!」
ちょっとした田舎だから学校周りも駅前も自然が豊かで、その公園には遊具の他に川も流れていたりと、どこか穏やかな印象。いつかの登校時、バスの中から見えるその公園について何気なく2人で話していた。他の部員も誘ってはみたものの、帰る方向が違ったり、どうせもうすぐ食べ終わるからと断られてしまったので、結局2人で行くことに。
「へぇ、結構いい所!」
さすがにもう川で遊んでいる子ども達はおらず、私達は肌寒さをマフラーで我慢して弁当を広げた。ほとんどいつも一緒にいるくせに、何でか女子の話っていうのは途切れることを知らない。弁当も食べ終わり、少し広めの公園を散策しようと歩き始めた頃、麻乃の携帯が鳴った。
「ともみ〜ごめん!」
「ん?何、彼氏くん?」
「うん。部活、ミーティングだけだったから早めに終わったんだって」
「そっかそっか!私のことはいいから行っといでよ」
ありがとう、と走って公園を抜けていく麻乃には、同級生の彼氏がいる。そろそろ1年が経つ頃だと思うけれど、周りが呆れるほどいっつもどこでもイチャイチャしていて、誰が注意したって2人共聞く耳を持たない。もちろん私の話だって聞かない。
(もう少しゆっくりしていこう)
どうせ隣駅だし、徒歩でも帰れる訳だし。歩いていた足を止めて、見つけたベンチに腰を降ろして遊んでいる子ども達に目を向ける。かわいいな、なんて在り来たりなことを考えていた。
その時、私の方に青いボールがコロコロと転がってきた。