第1章 あなたにあげる、リンドウを
「俺の、何が、駄目なん、だと思、う?」
また泣く。メンドクサイ男。
アキトの持って来たビールは底をついた。
私はキッチンに行き、シンク下から焼酎を出す。
アキトは泣きながらも私の後を付いてキッチンに来る。
そして冷蔵庫から氷を取ってグラスに入れる。グラスは2個。
頼んだわけじゃないけど、いつも通り。
「あんたの駄目なとこはメンドイとこ、すぐ泣くとこ」
「アズサの前でしか泣かないのにー」
「わかったから、わかったから、」
自分でも何が分かったのか分からないけど。
ビールから焼酎に移ってもペースは変わらない。
水のように飲む。
「アズサは、わかって、ない、」
アキトの服の袖口が少し濡れていた。
それで涙を拭くものだから。
アキトにティッシュ箱を投げつける。
「顔、汚いから拭きなさいよ」
こいつが泣くようになったのはいつからだろう。
最初振られたのを見たときは、泣いてなかった。
2回目は、少し悲しそうな顔してたくらい。
3回目は涙目になってたんだっけ。
あれ?それ、4回目だっけ?
忘れた。