第1章 あなたにあげる、リンドウを
「アズサー。そっちいっていい?」
電話の向こうから鼻水をすする音。
軽く嗚咽交じりなのが笑える。笑わないけど。
アキトは高校のときの同級生。
2年のとき同じクラスになり、たまたま一番最初、席が隣だった。
彼はよくノートも取らずに授業を受けていた。
だからよくノートを貸していた。
席が隣じゃなくなっても彼は私にノートを借りに来てた。
そんなものだから私のノートは結構綺麗にまとめられる様になり、授業もしっかり聞いて先生の言葉もノートに書き込んだ。
そのお陰で成績も上がったりしたものだ。
それから、何年目の付き合いになっただろうか。