第10章 イカサマはお兄様には通用しません。
もっと嫌な顔をした酒屋のマスターは
「……わかった、
四泊三食つき、それでどうだ」
空「ほい、ごっそさん」
あー…ね
『空、そのひと押し
ナイスだね』
空「ははっ」
悪ガキみたいな笑い方
「はぁ……
で、名前は?」
大きい溜息と一緒に
マスターが空に聞く
空「んー
………………空白でいいよ」
そう言って歩き出す
それを確認してから
花は拗ねたように
『わたしの名前は言わないの?』
ぷうと効果音が聞こえそうな様子で
頬を膨らませて空を見る
空は?をつけたが
白が
白「……にぃ、さっき
名前、聞かれた、ときのこと……」
花は自分だけ入ってない感じが
嫌だったらしい
『ちょっと…寂しかった』
空「拗ねんなよ…
空白はお前がいてこそだし
お前も含まれてんだよ」
と、ニカッと笑う
『なら……いい』
少し照れたようによそを向いた
空(まぁ、あそこで花の
名前は避けたほうが良かったみたいだし)
2人はわかっていた
酒場に入ってから異様にこちらを見ている視線
厳密に言えば
空が抱えている
花を見ていた…
自分たちと一緒で異世界から来た
ローブだって着ている
翼や尻尾も今は消えている
見やるところがあるとすれば
空にお姫様だっこされているということぐらい
しかし
それはそれ以外のなにかを見るかのように
ガン見されたような視線
そのせいもあって
花のことは極力伏せよう
という配慮であった
照れてそっぽ向いている
当の本人の頭を優しく撫でながら
警戒していた空白であった…
「………最愛の…神様」