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冬の夕空

第10章 言葉にできないもの


「好きだよ」
 
私の耳元で彼がささやく。

「はぁっ、あ……、わたし……んっ」
 
わたしも好き、って言おうとしたのに唇をキスでふさがれた。
 
長い長いキスをする。
唇が、身体中がしびれる。

彼の指が私の真ん中にふれる。
彼の指が少し冷たい。たぶんそれは私の中がすごく熱いから。
 
彼が私をぎゅっと抱きしめ、そっと頬ずりする。

「マリィ……」

「うん……。あっ……」
 
彼のものがそのまま入ってきた。
ゆっくりと、奥のほうまで。

「んっ、あぁん……。あっ、あぁぁ……」
 
身体が、意識が、どこかに沈んでいく。
何か握っていないとおぼれてしまう。
でも、自分の手がどこにあるかわからない……。
彼が私の手をぎゅっと握ってくれた。

「はぁ、はぁ……。ミシェル……」
 
私の口もとに彼が耳をよせる。

「好き……」
 
私がそう言うと、彼は私の肩越しにうなだれ、シーツに突っ伏した。
 
彼の身体の重みが心地よかった。
 
小さな声で彼がつぶやく。

「少しこうしてていい……?」

「うん……」

私はそっと彼の背中に手をまわす。
彼の呼吸にあわせて背中が揺れる。
 
普通に息して、ごはん食べて、夜は眠って……。
くっつくとこんなにあたたかいのに……、どうして彼は悪魔なんだろう。
 
しばらくすると彼はゆっくりと顔をあげ、私の目をじっと見た。
そして何か話し出すように口を軽く開く。
 
だけど彼の口から言葉は出てこなかった。
 
その唇で私たちは再びキスをした。


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