第27章 無双学園生徒会執行部。『April』(逆ハー)
「もしかして豊久から逃げてきたのか」
「…うぅ………はい」
先程の教室での失態を思い出して頭を押さえる。
「なんだ、何かあったのか?」
「投げ飛ばしてしまいました…その、島津君を」
「あの豊久を投げたのかよ!すげぇな、お前」
「………」
穴があったら入りたい。
「どうせ豊久の奴が何かしたんだろ」
「え?」
「違うのか?」
「や…その、突然抱き着かれて、驚いてそれで…」
「やっぱりな」
呆れたように笑う清正先輩に私は少しホッとした。
生徒会員の中で唯一身近に感じられるのが清正先輩だった。
部活が同じせいもあるだろうけど、先輩の持つ雰囲気がそうさせるのかもしれない。
包み込むような、雰囲気。
憧れる女子が多いのも納得だ。特に一、ニ年生から。
「信之に気に入られたんなら逃げる事は諦めろ」
「…………」
「まぁ、無茶苦茶な事からは俺が守ってやるから安心していい」
「……はい」
そうこう話している内に生徒会室前に着いてしまった。
清正先輩が扉を開けると、真田会長が振り返って不思議そうに首を傾げた。
「約束通り来てくれてありがとう、さん、迎えは豊久に頼んだ筈だったが…」
「アイツがコイツに手ェ出したから俺が代わった」
「清正先輩!それは誤解を招く言い方です…!」
慌てて言葉を挟んだけれど会長は納得したようにやれやれと溜め息を溢した。
「すまない、何があったか大体は想像がつくよ」
「はぁ…」
「と、呼んでも?」
「あ、はい…」
私が返事をした瞬間、勢い良く生徒会室の扉が開いて島津君が飛び込んできた。
「会長ー!さんどっか行った!…ってあれ?いる、さん」
「豊久、初対面の女子にいきなり抱き着くな、免疫ねぇヤツはビビるだろ」
慌ただしく入ってきた島津君から庇うようにして清正先輩は私を背後へ隠す。
こういう所がモテ要素なんだろうなと広い背中を見てしみじみと思ってしまう。
世の女子達はこの背中に守られたいんだろうな。
「さんっ!ごめん!俺…」
清正先輩の背中から意識は島津君へと移る。