第27章 無双学園生徒会執行部。『April』(逆ハー)
このままそっと帰ってしまえば!
そんな淡い私の期待はあっさりと打ち砕かれた。
「さーん!!迎えに来たっ!」
「!!」
大きな声で名前を呼ばれ、クラス中が扉の方を一斉に見る。
「俺、豊久!島津豊久!生徒会行くのに迎えに来た!」
「………どうも」
現れたのは生徒会書記の島津豊久。
名乗られなくったって知らない人なんていないよ…。
「うん!やっぱりお前可愛いな、さっきは一瞬でわからなかったけど!これからよろしく!」
「………ちょ…!」
とびきりのスマイルの後の突然のハグ。
クラスメイトからの黄色い悲鳴が聞こえた。
「いきなり何するの!!」
「……へ?」
私の背中に回っている島津豊久の腕を掴み、そのまま思い切り投げ飛ばした。
床から驚いた顔をして見上げてくる島津豊久とクラス中の冷やかな視線。
我に返った時にはもう遅い。
やってしまった…!
私、生徒会員を投げ飛ばしちゃった…。
「……………」
「……あ…」
こうなれば逃げるしかない。
「やっぱり今日行きません!!部活あるので!さよなら!!!」
「え?え??!」
教室を飛び出して向かった先は学園内の道場。
真田会長に後からどんな事を言われるか怖かったけど、今日はもう頭がパンク寸前だ。
(精神統一しよう…)
『合気道』と大きく書かれた掛け軸の前に正座をして座り、すうっと深呼吸をして目を閉じる。
少ない部員で細々と活動している合気道部。
これでも新聞に載るほどの成績は残している私。
だからこそさっき綺麗に島津豊久に技が決まってしまった。
「おい」
1分集中して気持ちを落ち着かせた所で背後から声をかけられた。
「………清正、先輩」
「なんで此処にいんだよ、今日は生徒会だろうが」
はい、すっかり忘れていました。
副会長の加藤清正先輩は同じ合気道部でした。
生徒会のある日は部活免除なのでした。
「豊久が迎えに行ったんじゃねぇのか?」
「い、色々ありまして…」
「とにかく行くぞ、他の奴はともかく遅れると三成がうるさいからな」
「……はい」
もう逃げられないと悟った私は大人しく清正先輩の後について歩いた。