第26章 Exclusive Love.(井伊直政)
「俺に言えない事などない筈だろう」
「………っ」
強い視線からも強い言葉からも逃げられない。
何か言おうとするも出てくるのは言葉ではなく涙。
「言えない事、ありま、す…」
涙の合間合間に言葉を紡いで直政にそう告げる。
言われた本人はとても驚いた顔をして目を見開いていいた。
任務に限らず、逐一報告をかかさない。
そのがまさか自分に言えない事があるなど思いもしていなかったのだ。
ズキリと胸が痛む。
俺に言えない事を真田信之には話していたのだろうか。
「、」
「私は愚かです、直政様の忍でありながら…っ、貴方に焦がれてしまう…!貴方に、想って欲しいと願ってしまうのです…!」
口を開き名前を呼んだ直政の言葉を遮っては声を荒げた。
溜め込んでいた想いを、一気に爆発させるように。
「………///」
珍しく呆気に取られた直政は言葉を失う。
今までこんな感情的なは見たことがない。
初めてぶつけられるの生身の感情。
その矛先が自分である事。
困惑の中にもじんわりと熱くなるものを感じた。
「…申し訳ございません、頭を冷してきます」
忍術でその場から消えようとするの腕を直政は慌てて取る。
「…ダメだ、ダメすぎる」
「……!申し訳、ございません」
直政の言葉には再び溢れそうになる涙を堪える。
ダメなものはダメとハッキリと言う方だから。
この気持ちはもう捨ててしまおう。
「そうではない…ダメなのは俺だ」
「え……?」
「側に置いておきながら、お前の気持ち一つ汲み取れずにいる」
フッと笑っての頬に手を添える。
ピクリと小さく震えたの瞳から一粒の涙が落ちた。
「信之殿に先に悟られているようではお前の主失格だ」
「直政、様…?」
何を言われているのかわからない。
何故この方は反省の意を示しているのだろう。
「だが、お前とて気付いていないだろう?俺が何故家康様に無理を言ってまでお前を俺付きの忍にしたのか」