第25章 大嫌いの裏側(加藤清正)
「清正?」
「……」
「おーい、清正ってば!ねぇ!」
「…っ?」
「珍しいね、清正がぼーっとしてるの…どうしたの?」
家の門に手を掛けたところで声を掛けられた。
振り返るとそこにいたのは今一番会いたくなかった相手。
どうしたの?…か。
言えるわけねぇだろ。
「…なんでもねぇ、気にするな」
「なんでもない…か」
「それより三成と…付き合うんだってな」
「え?…あ……」
何赤くなってんだよ。
何恥ずかしがってんだよ。
何動揺してんだよ。
違うって、言えよ。
「三成の事…好きなのか」
「…清正?」
「もうキスしたのか」
「な…!//」
「あぁ、それ以上ももう済ませてんのか?」
「……っ」
こんな事言うつもりじゃない。
本当は祝福してやりてぇのに。
言葉が止まらない。
「何黙ってんだよ…」
「…………」
涙目になっているのがわかった。
泣かせてんのは、俺か。
もう嫌われたって構わねぇ。
そう頭を過ると次の瞬間には体が動いていた。
「…んっ…!!」
無理矢理に奪った唇。
体を離そうとするその手を掴んで引き寄せた。
泣かせてんのに、ひどい事してんのに、俺の心臓は高鳴るばかりだった。
「清正…っ」
何度目かの抵抗で俺は漸くその手を解放した。
「ダチの彼女に手ぇ出すなんて最低だよな」
「清正…?」
「…もう、俺に近寄るな」
それだけ言い残して家の中に入る。
ドアを閉めてそのまま玄関にズルズルと座り込む。
嫌われても良いと思っている筈なのに、を好きになる一方で。
「情けねぇ……」
、明日もしも顔を合わせたなら大嫌いって罵って思いっきり俺をひっぱたけ。