第23章 You're the one for me ~forth~
「とっ、豊久様…!?」
「あぁっ!いいって!寝ててくれ」
家に戻ると布団で横になっていた颯が慌てて身体を起こそうとしたが豊久がそれを制す。
このやり取りを二、三回繰り返した後漸く颯が折れた形で落ち着いた。
「傷の具合は良いのか?」
「はい、もう少し大人しくしていれば動けるようになります」
「そっか、良かったな!」
それからしばらくして、お茶を飲みながらも何処かソワソワしている豊久の様子に颯が気が付いた。
(ふっ…わかり易い城主様だ…)
豊久の思考をあっさりと読んでしまった颯はに声をかける。
「、俺は少し眠ろうと思う…豊久様と話もあるだろうから小川へ行ってみてはどうだろう?」
「?」コクン
は少し間を置いた後、笑って頷いた。
そして豊久に視線を送る。
「わかった、行こう」
豊久の返事を聞くともう一度頷く。
の笑顔に思わず豊久の顔が赤くなった。
誰かをこんな風に意識した事は今まで一度もない。
家を出てあの出会った小川を目指す。
いつもならが相槌を打つ暇もない程に喋る豊久だが、今日はうまく話せない。
「………?」
「………」
そんな豊久の様子をは不思議そうに見つめていた。
(何だろう…豊久様、何処か具合でも悪いのかしら……)
「あ…!ごめんな、少し考え事してた!」
視線に気付いた豊久が慌てて口を開く。
二人で並んで小川の側に腰をおろした。
は手頃な小枝を見つけて地面に文字を並べた。
『来てくれてありがとうございます』
「………」
『でも豊久様はいつも突然現れるのですね』
「う……///」
クスクスとから笑い声がもれる。
のそんな笑顔に豊久は見入ってしまう。
「………//」
胸が高鳴り、言葉が詰まる。
今までどうやってと話していたろう?
どうやって接していたろう?
うまく、思い出すことが出来ない。
そんないつもと違う豊久にも不安が募り始めていた。