第20章 You're the one for me ~third~
「突然邪魔立てしやがって……何だテメェは!!餓鬼が!」
「………と、豊久様…!」
やっとの思いで颯は豊久の名を口にした。
そんな颯を豊久はチラリと振り返って声を掛ける。
「アンタまで居なくなったらはもっと泣く!そんな事、絶対にさせない!」
そこからは見事なものだった。
大きな斧を軽々と振り回し次々に山賊達を薙ぎ倒していく。
山賊達の一太刀も豊久に当たることなく全員が地面に倒れてしまった。
「後は頼む」
「「はっ!!」」
豊久の従者達の手によって縛り上げられた山賊達は城へと連行されて行った。
「大丈夫か?」
「………申し訳ありません!!豊久様の手を煩わせてしまうなど…!」
座り込んだままだった颯は豊久に頭を下げ謝る。
そんな颯を見て豊久はにこやかに微笑んだ。
「約束、したからな!これからは絶対に守るって」
視線をへと移す。
(豊久、様………)
動かずにいた足がやっと動く。
は颯と豊久の元へと駆け出した。
村人達もやっと緊張をほどき颯の元へ歩み寄ったり、壊された物の片付けに取り掛かった。
「………っ」
「すまない、…お前を一人にする所だった…」
肩の怪我の手当てを受けながら颯はの頭を撫でる。
『無事で良かった』
は震えた指で地面にそう綴った。
そして豊久に向き直り頭を下げる。
『ありがとうございました』
地面に書かれた文字に豊久は屈んで優しく触れた。
そしてと目線を合わせ微笑む。
「悲しい思いはもうさせない、俺がを守る!」
さっきまでの戦っている姿と違い無邪気な笑顔を見せる豊久につられても豊久に微笑み返す。
これが初めて豊久に笑顔を見せた瞬間だった。
「……っ!!///」
不意を付かれた形となり、豊久の顔はみるみる内に赤くなる。