第18章 You're the one for me ~second~
は慌てて落ちていた木の枝を拾い、地面に字を書く。
『あなたは何も悪くありません』
『顔を上げてください』
地面の字に気付いた豊久は顔を上げてを見つめた。
「お前が話せなくなった事も聞いたんだ……此処を守るのが俺の役目だ、なのにそれが出来なかった」
「……!」(この方は…)
「だから謝る、それでもう二度と危ない目には合わせない!」
「……」(この方は…なんて真っ直ぐな人なんだろう)
「名前、聞いてもいいか?」
穏やかな豊久の笑みにはそっと地面に自分の名前を書いた。
「か!綺麗な名前だな!」
それからしばらくの間、二人は小川で過ごした。
豊久は自分の武勇や叔父、義弘の武勇を身振り手振りを加えながら話した。
はそれに対し、地面に文字を書いて答える。
今までまわってきた国の話や自身の話。
もっとも全て豊久が質問した事にが答える、と言ったやり取りだったが。
「には兄弟いるのか?」
「…………」(きょうだい……)
今まで軽快に動いていたの手の動きが鈍った。
木の枝を持つ手に僅かに力を込め、走らせた。
『兄様 姉様』
姉上、と書き終えた所で動きが止まる。
豊久がの顔を覗くとの目からは涙がはらはらと零れ落ちていた。
「…!?」
「……っ!」
豊久はただ慌てる事しか出来ずにいた。
さっきまで旅の話を書き綴ってくれていたが何故泣いているのかわからなかった。
カランと音を立てての手から木の枝が落ちた。