第18章 You're the one for me ~second~
村人達に別れを告げた豊久はと出会ったあの森の中の小川へと足を運ぶ。
会える確証はない、でも何となく会えるかもとは思っていた。
もちろん何の根拠も豊久にはない。
草木を掻き分け小川に着いたがそこにの姿はなかった。
(当たり前かぁ…)
力んでいた身体から力が抜け、豊久は川に足を浸けて座り込む。
「…また会いたいな」
足を動かすとパシャリと何とも涼やかな音が周囲に響く。
それとほぼ同時にガサリと草木が揺れる音がした。
「!」
「…………あ!」
音に気が付いた豊久が振り返ると、同じように驚いて豊久を見つめるの姿があった。
「凄い!!会えた!思ってたら、ホントに!!」
「………?」
川から上がり満面の笑みで自分に走り寄る豊久には戸惑いその場を動けずにいた。
「この前はすぐに別れただろ?また会えて良かった」
「…………」
「俺は豊久!島津豊久!」
「……」
はゆっくりと頷いた。
更に俺の事知ってるのかと問う豊久にはもう一度頷く。
「村の皆に聞いたんだ、山賊の事…」
「…!」
“山賊”の言葉にの顔が強張る。
それに気付いた豊久はの両肩に手を置いた。
「守れなくてごめん!領主失格だ…!」
「!」(豊久様…!)
頭を下げる豊久を慌ててが止める。
此処を治めている殿様が自分などに頭を下げて良い筈がない。
ましてやこんな場面を誰かに見られでもしたら豊久の立場がなくなってしまう。
は謝罪など必要ないと言わんばかりに首を大きく横に振った。