第18章 You're the one for me ~second~
「……!…探したぞ」
「……誰だ?」
「…………」(兄様……)
「戻りが遅いから…心配になってな」
を探しに来た颯はが一緒にいた男の顔をチラリと確認して目を見開いた。
「し…島津豊久様…!!?何故貴方様が此処に…!」
妹を引き留めて居たのはどこの馬の骨だと思っていたのにそこに居たのは此処を治める領主様なのだ、驚かない筈がない。
颯は慌てて膝間付く。
「もしかして…の……?」
「は…の、兄に御座います…」
「立ってくれ、そのままだと話辛いだろ?」
「……はい」
ゆっくりと立ち上がった颯の元にフラフラとは歩み寄り、もたれ掛かる様に颯の腕の中に収まった。
「………?」
妹の様子がおかしいと気付いた颯は豊久に向き直った。
「豊久様…に、妹に何か……?」
「俺、兄弟は居るのかって…聞いたんだ」
「…………」(それでか………)
妹が何故泣いているのか理解した颯はしっかりとの肩を抱き、問いに答えるべく豊久を真っ直ぐに見据えた。
「…兄弟は、俺と…姉も居ましたが殺されました」
「……!!」
「それから父も母も、今は俺達二人だけです」
「………」(どうしよう…気持ち悪い………)
兄の言葉が頭を巡る。
改めて言葉にして聞いてしまうと、本当にいなくなってしまったんだと思い知らされる。
は兄の羽織の裾を強く握った。
「豊久様…俺達はこれで失礼致します、もう会う事もないでしょう」
「え…?」
「では、これで」
立ち去る二人の背中を見つめたまま、
颯の言葉の意味を理解するまで数秒。
それは、国を出ると言う事なのか。
「…!俺はお前の歌をもう一度聴きたい!俺は…それを諦めない!!」
「………っ!」(豊久、様…)
振り返ろうとしたを颯が制す。
諦めないと叫んだ豊久はどんな顔をしていたのだろうか。
はそれを見ることなく豊久と別れた。
豊久の足下には、先程までが書き記したたくさんの文字だけが残されていた。
to be continued……