第15章 ハレガサ(島津豊久)
「もっと飛ばして豊久っ!」
「おっ…落っこっても知らねーからなっ!」
「坂道~!きゃ~っ!」
放課後、俺の自転車の後ろに先輩を乗せてハイスピードで坂を下る。
肩に掴まって立つ先輩は昼間とは違ってすげーはしゃいでる。
「見えたっ!海っ」
「先輩!上で暴れんなってっ!」
目指す場所は海。
先輩と俺との『いつもの場所』。
「ありがとう」
自転車を停めると先輩はぴょんっと飛び下りて砂浜へ降りていく。
「………ったく、やっぱ空元気じゃんかよ」
先輩の背中を見てボソリと呟く。
それから近くの自販機で缶コーヒーを二本買い、先輩の後を追った。
砂浜に一人座る先輩はなんか小さく見えて、消えてしまいそうだなんて思ってしまって、焦って手を伸ばした。
「先輩…っ」
「!?…びっくりしたぁ」
「あ…えと、コーヒー買ってきた」
肩を掴まれ驚く先輩に買ってきた缶コーヒーを手渡す。
ありがとうと、ふにゃりと笑う。
畜生、可愛い…。
「うまくいってるつもりだったんだけどな…」
「………」
「あれ…結構…傷ついて、たの…かなっ?」
膝を抱えてる手に力が込められてるのが見てわかる。
顔を伏せてるけど、先輩がどんな顔してるのかもわかる。
「……っ!」
「と、よひさ…///?」
飲みかけの缶コーヒーを放り投げ先輩を思いきり抱き締めた。
「先輩は…わかってない、自分のこと」
「自分のこと……?」
頬に手を当て、涙を拭う。
泣いてる姿でさえ、愛しく感じる。
「よく考えたらわかるだろ!先輩の目の前から居なくなって一番困るのは誰だよ!」
「…………//」
「…………」
先輩の前にドカッと腰を下ろし顔を真剣に見つめる。
しばらく考えた後、先輩の顔がまた涙で歪む。