第15章 ハレガサ(島津豊久)
「豊久ぁ~~っ」
「うわっ!」
昼休みも半分を過ぎた頃、1つ上の学年の先輩が俺の所に飛び込んできた。
こうして俺の所に来る時は決まって何か合った時で、しかも弱っている時。
先輩は俺の片想いの相手。
「先輩、今度はどうしたんだ?」
飲みかけのペットボトルを脇に置いて先輩の背中をポンポンと宥めるように叩く。
「…振られたぁ」
そう言って顔を上げた先輩の目は少し腫れていて、昨夜は泣きはらしたのだと分かった。
「なんで…?」
「と言うより…二股掛けられてて」
「なんだよそれ!」
思わず声を張り上げてしまう。
「と、豊久…っ!」
しーっと慌てて先輩が合図をする。
そんな仕草でさえ、可愛い。
「…ごめん//でもっ二股って…」
「良いの、もう…宗茂先輩はすっごくモテるんだもん、私なんか…」
先輩の彼氏…もとい元彼は俺より2つ上の立花宗茂先輩。
勉強も運動も何でもできてとにかくモテる…同じ一年の女子でも好きだって言ってる奴は多い。
俺が勝ってるところなんて一つもないんだ。
「豊久、今日部活ある…?」
「いや、今日はオフだけど…」
「なら…あそこ、行きたい」
「…わかった、放課後校門で待ち合わせな!」
俺が笑って見せると先輩はホッとした様な顔をしていた。
「ありがと…豊久、また放課後ね」
そう言うと先輩は自分の教室へと戻っていった。
先輩の行きたい場所は決まってる。
落ち込んだ時、元気を出したい時、必ず俺がそこへ連れていくんだ。