第13章 熱情ストラテジスト(小早川隆景)
「…貴女といると自分がこんなに我慢のきかない人間だったのかと思い知らされてしまいます」
「隆景様…あのっ…!」
何故私なのですか?
言いかけて、やめる。
「…?」
「いえ、何でもありません…」
「失礼致します、隆景様」
私と同じように毛利家に仕える女中さんが部屋を訪れた。
「私に用事ですか?」
「いえ、に…長曽我部様から書物が届いております故、運ぶのを手伝って頂戴」
「っはい…!」
直ぐに立ち上がり部屋を出ていこうとする私の手を隆景様が咄嗟に掴む。
「あっ…!」
「仕事、終わったら此処に戻ってきて下さいね…」
「……///は、い」
「………、早くなさい」
「はいっ…!」
掴まれた手が熱い。
ぼーっとして歩いていると突然前を歩いていた女中さんが足を止める。
そのままぶつかりそうになってしまった。
「っ申し訳ありません…」
慌てて謝る私に冷たい視線を送る。
「……隆景様が貴女を構うのは気まぐれなのだから、いい気にならない方が身のためよ」
「……っ!?」
「気まぐれでなければ貴女など構う筈ないでしょう?」
「あ……」
私よりも長く毛利家に仕えている女中の姉様はそう厳しく言い放った。
何も言い返せない。
だってその通りだと思ってしまったから。
(…話し声?)
姉様の言葉に動揺していた私は隆景様が側にいる事など全く気付かずにいた。