第13章 熱情ストラテジスト(小早川隆景)
あの日以来、隆景様は時間が空けば私に会いに来るように言ってくる。
嬉しい気持ちはあるのに、戸惑いの方が大きくてうまく話せない。
「こんな日は部屋でゆっくりするのも良いですね、」
「はい…」
外は雨が降っていた。
会話が途切れるとシトシトと雨の音が聞こえてくる。
(特に話しているわけじゃないのに…なんだか落ち着く……)
「…雨の音、落ち着きますね」
「……!」
隆景様が私と同じように思っていてくれた事に感動してしまう。
「…?どうかしましたか?」
「…いえっ、あの…」
思ったことを伝えて良いものか悩んだけれど、私は勇気を出して隆景様を見つめた。
「…私も、その、同じ様に思っておりました……静かに雨の音を二人で聞いている今が…とても落ち着いて」
話していると顔が熱くなる。
思わず目を伏せてしまう。
「……」
とても優しい声で私を呼ぶ。
それと共に隆景様の手が髪に触れる。
「貴女は…本当に可愛い人ですね」
「……?」
「ただ雨の音が落ち着くのではなくて、私と二人で聞く事が落ち着くと言ってくれた…」
「あ…///」
自分の言ったことを思い出してますます顔が熱くなるのを感じた。
気付くと、隆景様の顔が間近まで迫っていた。
「隆景様…っ」
「今日は…貴女と二人でのんびりと、そう思っていましたが取り止めです」
「え…///?」
なんて綺麗な顔なんだろう。
なんて綺麗な瞳なんだろう。
「あ……」
静かに唇が重なる。
緊張で体に力が入ってしまう。
こうしている事が、まだ信じられない私がいる…。
「…力を抜いて、そう」
「た、隆景様…んっ」
甘い口付けは私に熱と棘を与える。
このまま溺れていたい気持ちと、何故私なのだろうと言う疑問。
(気まぐれ……?でも…)
長い口付けが終わり、唇が離れると細い銀色の糸が私たちを繋いでいた。