第38章 無双学園生徒会執行部。『January』(逆ハー)
声のした方を見上げると、眉間に皺を寄せてこちらを睨んでいる三成先輩。
その後ろには豊久くんの姿もあった。
側まで来ると三成先輩は井伊くんから私を引き剥がし自分の方へと抱き寄せた。
嬉しいけど、恥ずかしい…!
「直政?」
三成先輩が今にも井伊くんに文句を言おうと口を開いた所で、それよりも早く言葉を発したのは豊久くんだった。
その事に驚いて私は豊久くんを見つめる。
今日初めて会うはずの転入生の名前を何故彼が呼ぶのか。
「お前…豊久か?」
井伊くんもそれに応えるように豊久くんを呼ぶ。
さっきまでのポーカーフェイスが驚いた顔を見せている。
それだけでも何か得した気分になっていたら、三成先輩に軽くデコピンされた。
「…見つめ過ぎなのだよ、馬鹿」
「先輩、そんなつもりは…」
「ホントに直政か!!すごい!また会えるなんて思わなかった!俺!お前背ぇ伸びたなーっ」
「お前の騒がしさは昔のままだな、犬っぽさも変わらん」
「俺は犬じゃないっ!」
その様子を見て私は先ほどの井伊くんの話を思い出す。
もしかして、彼の言っていた一緒に過ごす事が多かったって言ってた人って…。
「豊久くんの事…?」
その時、予鈴が廊下に鳴り響く。
「あ、大変だ。井伊くん案内はまた昼休みにしよう、授業が始まっちゃう」
「ちょっと待て、何故お前がコイツの世話を焼くのだ」
「先生に頼まれたんです、それに同じクラスみたいですし…」
「じゃあ俺も!一緒に行って良い!?」
「豊久くんも?うん、いいけど」
「ならば俺も行く」
「み、三成先輩…!?」
時間がないと言う中でバタバタと話が進んでいく。
豊久くんは井伊くんの友逹だからわかるけど、どうして三成先輩まで…。
理由を考えながら三成先輩の顔を覗き込むとパチリと目が合う。
目が合った三成先輩はどこかいつもよりも機嫌が悪そうに見える。
「どう……」
どうかしましたか。
そう口を開き掛けた私の頭に大好きな手が乗せられた。
「…少しは察しろ、馬鹿」
「……っ」
その言葉と三成先輩の顔でわかった。
もしかして、もしかしなくても…三成先輩、妬いてくれている…。
私の顔に熱が集まる。
それを誤魔化すように俯いて、小さく頷いた。
そのまま本鈴がなる前にそれぞれの教室へと戻ったのだった。
昼休みに生徒会室へ集まる事を決めて。