第36章 無双学園生徒会執行部。『November』(逆ハー)
清正先輩と別れてから私は自分のクラスに戻って仕事に取り掛かった。
逆転喫茶と表して男女の服を入れ換えての接客。
とは言いつつも、私は裏方なのであまり関係ないのだけれど。
ひっきりなしに来るオーダーを捌きながら時計に目をやる。
時刻はもうすぐ16時。
『17時に自分の教室にいろ、迎えに行く』
三成先輩の言葉が頭を過る。
約束までもう少し。
疲れてきた体を奮い立たせて仕事に集中した。
「ねぇ」
食券販売の子達に差し入れの飲み物を渡しに廊下に出た時だった。
声がして振り向くとそこには以前図書準備室で私が引っ叩かれそうになった…その叩こうとした張本人の先輩。
「…何か」
あくまでも冷静に対応、それを心掛けた。
「お話、しましょうよ…ね?」
ゾクリと嫌な予感がした。
笑っているのに目はとても冷たい。
この場に居座られても困るので食券販売の子達に大丈夫だからと声を掛けて先輩の後に着いて行く事にした。
仕事、抜け出してごめんねとも告げて。
「何処まで行くんですか?」
「………」
答えは返ってこない。
そのまま沈黙は続き、やっと足を止めたのは屋上へ繋がる扉の前だった。
「先輩、ここ……」
普段この扉は鍵が掛かっていて開けられないはず。
鍵は職員室で保管してあったはずだ。
なのに、どうしてこの人が鍵を……?
いや、普段は盗れなくても行事のゴタゴタの最中なら気づかれないかもしれない。
無言のまま扉を開けた先輩は私を屋上へと突き飛ばした。
まさか。
「ちょ…!まっ、待って下さい…!」
私の呼び掛けも虚しく扉はがチャリと音を立てて閉ざされてしまった。
ノブを回そうとするも鍵が掛けられて叶わない。
「全部見てたから知ってんのよ!隆景くんや豊久くんだけじゃなく…、か、加藤くんとまで…!!絶対許さない!」
加藤くん……あ、清正先輩か!
全部見てたって一体いつ頃から私をつけ回していたんだろう。
三成先輩の事で悩んだり、生徒会の仕事が忙しかったりで全然気付いてなかった。
察するにこの人の本命は…清正先輩?
「ずっとそこに居ればいいのよ、後夜祭まで楽しもうなんてさせないから」
「え……?ちょ…!開けて下さい!」
遠ざかる人の気配。
これは…マズイんじゃなかろうか…。