第36章 無双学園生徒会執行部。『November』(逆ハー)
「なんか食うか?」
「そうですね…お昼までまだ時間ありそうなので食べちゃいましょうか!」
「おう」
「あれ!!私あれが良いです!ベビーカステラ!」
「わかった、わかったから!ったく、はしゃぎ過ぎだ馬鹿」
「だって文化祭ですもん!」
「なんだその理由は」
たこ焼き機を利用したベビーカステラ屋さんは隆景くんのクラスの出店。
教室を見回したが彼の姿はなかった。
「隆景くん裏方なんですね」
「接客担当だったら客掃け悪くてダメなんだろ」
なるほど。
呼び込みには最適な甘いルックスだが、そのまま呼んだお客さんが帰らずにいるのも困るのか。
ベビーカステラを買って教室を出る。
口に放り込んだそれはまだ温かく、ふんわり甘い。
会長や隆景くんだけじゃない、廊下を歩いていれば清正先輩だってたくさんの女の子に声を掛けられていた。
この分だときっと豊久くんや三成先輩もそうなんだろうな。
そう考えたら、チクリと胸が痛んだ。
「なぁ、少し話せる所行かねぇか」
「はい」
向かった先は生徒会室。
自分の席に座った清正先輩は机に突っ伏して大きな溜め息をついた。
「はぁ……やっと静かになったな」
「清正先輩も凄いですね!あんなにたくさんの女の子に声掛けられてましたし」
ここに来るまでも在校生、他校生問わず声を掛けられては写真をせがまれていた。
だけど、先輩はそれを全部断ってたんだよね…。
「俺から誘っといたくせに結局ここに居させちまって…悪かったな」
「いえ、私はこれが買えたので満足です」
ベビーカステラの袋を見せて先輩に笑い掛けると、頭にポンと手を置かれお礼を言われた。
「…前に話した事覚えてるか?」
「………はい」
それはきっと、先輩からの告白の事。
「お前の心がもう三成見てるってのも知ってる」
「清正先輩…」
「それでも、俺はお前がいい」
言葉とは裏腹に、どこか吹っ切れているような顏をしている様に見える。
「アイツ等よりもずっと先に、好きになってたんだけどな」
「……っ」
唇を噛み締める。
こんな時、なんて言うのが正解なんだろう。
「そんな顏すんなよ、モタモタしてた俺が悪い」
「清正、先輩…私…っ」
「もう昼過ぎるぞ、交代なんだろ?俺もクラスへ戻る」
「…っ」
何も言い返せないまま、私は生徒会室を後にした。