第36章 無双学園生徒会執行部。『November』(逆ハー)
帰り道、私が豊久くんを誘ったのは二人で出掛けた時にも寄った公園だった。
あれから2ヶ月も経つ。
あの時は夏服だった私達も今はブレザーに袖を通している。
自転車を押して隣を歩く豊久くんはブレザーごと袖を捲っていて暑いのか寒いのか、その様子からはわからない。
そんな装いが彼らしくて思わず笑みが溢れた。
「すっかり葉っぱも落ちちゃってるね」
「ホントだ、うわー!落ち葉だらけ!焼き芋したくなる!」
公園の木々たちはその葉を落としていて、残っている葉は時折寂しそうに風に揺れていた。
「ねぇ、先輩。話ってさ、あの時の返事?」
「え…?」
突如突かれた核心に私は戸惑いを隠せずにいた。
豊久くんはそんな私から『肯定』と読み取ったらしい。
「俺にとって良くない話?それ」
「…豊久くん」
「あーっ!くっそー!俺じゃないのかぁ…!」
突然叫んだと思ったら豊久くんは頭を抱えてその場にしゃがみこんでしまった。
ちゃんと…自分の口で言わなくちゃ。
「…豊久くん、ごめん。豊久くんの気持ちには…私、応えられない」
「なんとなくさ…そんな気してた、俺」
最近の先輩の視線の先にいたのは、俺じゃないって事。
どんなに見て欲しくても、それは叶わないって事。
「あー…くそ…悔しいな……」
「豊久、くん…」
顏を上げないまま、彼はポツリと呟いた。
「私…豊久くんの笑顔に救われてたよ、あの時だって連れ出してくれて本当に有り難かった」
今何を言っても真実味なんてないかもしれないけど、これは私が心から思う真実。
「だから、ありがとう…」
お礼を言い終えた所でしゃがんでいた豊久くんが勢い良く立ち上がり私の両肩を掴んだ。
「もしも!!この先先輩がまた俺の元気必要だって思ったら…!」
「う、うん…?」
「…絶対、頼って。俺の事」
「…!」
そう言って私を強く抱き締めた。
5秒にも満たないそのハグが終わると豊久くんはいつもの笑顔を見せてくれた。
最後のハグだから多目に見てよね!って付け加えて。