第36章 無双学園生徒会執行部。『November』(逆ハー)
放課後、合気道部で清正先輩と顔を合わせた。
「なんだよ、何か顔についてるか?」
「な、何でもないです…」
意識し過ぎて見つめてしまっていた。
三成先輩への気持ちを自覚してしまった以上、私はそれを清正先輩に伝えなければならない。
清正先輩だけじゃない…豊久くんと隆景くんにも言わなくちゃ。
「変なヤツ」
笑って頭を撫でられた。
大きな手から伝わる優しい体温。
つい甘えてしまいそうになるけれど、それでは清正先輩に失礼だ。
「なぁ、文化祭の初日…お前誰かと回ったりするのか」
「え…?あ、いや特に決めてないです」
「なら俺に少し時間くれ」
清正先輩のお誘いを受けるかどうか迷った。
でも、先輩にとっては最後の文化祭。
そう思った私は「はい」と頷いた。
私の返事を聞いた清正先輩が心底嬉しそうに笑ったりするから…私の心はざわついた。
(私は、ずるい…)
清正先輩の気持ちに答えられないくせに、こんな事で清正先輩を振ると言う罪悪感から救われた気になっている。
たった数時間、一緒に過ごすだけなのに。
着替えた後、時間の約束をして私は帰路に着いた。
その日は中々寝付けなかった。
私はただ運が良いって事以外、何も取り柄もないのに。
「好きになって貰う資格、私にあるのかな…」
グルグルと考えていたら気付かない内に眠っていたらしい。
次に目を開けた時はもう夜が明けていた。
「珍しく眠そうですね」
「うん…昨日、ちょっとよく眠れなくて」
昼休み、私は隆景くんと久しぶりにお昼ご飯を一緒に食べていた。
私から誘ったのはこれが初めてだった。
あんなに避けていた私の誘いを隆景くんは快く応じてくれた。
誘ったのには大きな理由がある。
「……何か私に話があるんでしょう?」
「…うん」
お互いにお昼を食べ終えた所で隆景くんが私に話を振る。
一呼吸おいて私は返事を返した。
彼の優しい目を、真っ直ぐに見つめて。