第36章 無双学園生徒会執行部。『November』(逆ハー)
風が冷たい。
でも、それが気持ちいい。
朝練の後、日課である生徒会室の掃除を終えた。
最後に窓を閉めて終わりなのだけれど、もう少し風が当たっていたくて私はそのまま窓の前に立ち尽くしていた。
『私の気持ち』とやらについて体育祭の後からずっと考え続けていた。
好きとか嫌いとかはきっと私はよくわかってない。
だからってわかりませんじゃもうダメなのだ。
心の中に誰がいるのか。
それだけを考えてきた。
「もう空気の入れ換えは良さそうですけど」
「!!」
声を掛けられて驚いて振り向くと隆景くんが立っていた。
「あまり冷たい風に当たり過ぎると風邪を引きますよ」
「隆景くん……」
生徒会の集まりで顔を合わすことはあっても、実はこうして二人でしっかりと顔を合わせるのは久しぶりだったりする。
体育祭での一件から私達はいつも一緒に食べていたお昼を一度も共にしていなかった。
私が何かと理由をつけて避けているせいなんだけど…。
「あんなにあからさまに避けられては流石に私も傷付きます」
「……あ、」
「謝るくらい私にさせてください」
「…?」
私が謝るのではなく、彼が謝りたいと言う。
もしかしてキスをしたことを謝るのかな…。
「」
呼ばれて顔を上げると目が合った。
「泣かせてしまって…すみません。そんなつもりはなかったのですが」
「え……?」
そうか、私。
あの時泣いたんだっけ。
そんな事すっかり忘れていた。
「あぁ、キスの事なら謝りませんよ」
私の顔を見て隆景くんはそう続けた。
「でも…」
更に隆景くんが話をしようとした時にまた生徒会室の扉が開いた。
「いつまでそうしている、予令がもう鳴るぞ」
「……!!」
「三成先輩、おはようございます」
声のする方が見れない。
顔を上げられない。
心臓が、痛い。
「お、おはようございます!戻ります…!」
「は…?おい!!?」
下を向いたまま私は入ってた三成先輩の横をすり抜けて自分の教室へと向かった。
そうなのだ。
心の中に誰がいるのか。
そう考える度に最後に必ず貴方に行き着いてしまう。
三成先輩。
私の心には貴方がいるんです。