第35章 無双学園生徒会執行部。『October』(逆ハー)
「んん…っ!」
合わさった唇を時折動かして甘噛みされる。
その度に恥ずかしさが込み上げて隆景くんの胸板を押すものの、ビクとも動かない。
それどころか背中に手を回されてガッチリとホールドされてしまう。
うまく呼吸が出来なくて、酸素を求めて口を開けたところに舌が差し込まれる。
挑発するように舌先に触れられ、一気に顔が熱くなった。
「……な、んで………」
漸く唇が離れた時、私は絞り出すようにそう言った。
「…私といる時だけ、貴女は安心しきったような顔をしていましたね」
「…え?」
「こないだまでそれは豊久も同じだったのに、今では豊久も男として意識するようになった」
「………」
「私は…人畜無害だと思っていましたか?」
「た、隆景くん…!」
「その紙に書いてあることも、事実です。どうかそれを覚えておいて」
背中にはまだしっかりと腕が回されたまま。
至近距離で隆景くんの華を感じてクラクラしてしまう。
その時だった。
「隆景……?」
聞き覚えのある声が隆景くんの名を呼んだ。
私達が声の主の方を向くとそこにはいつもの落ち着いた様子ではなく、明らかに動揺を見せている三成先輩の姿。
「な、にを…しているのだ、隆景…!」
「み、三成、先輩…」
「見回りですか?三成先輩」
一人涼しい顔をしている隆景くんは普段と変わらない態度で先輩に笑顔を向けた。
「何をしているのかと聞いているのだ!」
「何?何とは…この抱擁の事ですか?それとも」
隆景くんが私の頬を撫でる。
「先程のキスの事ですか」
「た、隆景くん…!」
三成先輩には、知られたくなかった。
なぜ?
どうして私はそう思ったの?
答えはわからないまま、ただ涙だけが溢れ出した。
「……?」
隆景くんの目が見開かれる。
驚いてる顔なんて初めて見た…。
そんな事を思っているとまた別の声が聞こえた。
「仕事もしないでこんなところで女の子を泣かせていたらダメだろう、清正と豊久が忙しそうにしているよ」
「会長……!?」
「二人は少し頭を冷やすといい。、行こうか」
「あ…はい、でも…」
「いいからおいで」
「……はい」
顔は笑っているのに、拒否など許されない声色だった。
会長は私の手を引いて二人に背を向けた。