第35章 無双学園生徒会執行部。『October』(逆ハー)
「隆景くん!?」
「すみません、借りられて下さい」
「借り物って…私なの!?」
そのまま手を引かれゴール。
体育祭実行委員にお題の紙を見せオーケーを貰い、歩いて退場口に向かう。
そのまま止まることなく走って、漸く足を止めたのは校庭とは真逆の西側の校舎の前。
盛り上っている校庭とは違い、ここはとても静かだった。
「隆景くん、お題って…」
「これですよ」
見せられた小さな紙には『救護班』の文字が書かれてあった。
あぁ…それで私か。
隆景くんはまた紙をポケットにしまう。
だけど、私は少し違和感を感じた。
今の、救護班の文字…あれって…。
「ねぇ隆景くん、今の紙の字って隆景くんの字じゃ…」
見間違いじゃなければ、あれは絶対隆景くんの字。
私達の間に沈黙が訪れた。
遠くで、歓声が聞こえる。
「…さすが、よくわかりましたね」
「やっぱり…」
普段生徒会の仕事で書記を務めている隆景くんの字は良く見ている字だったから。
でも、じゃあなんで隆景くんはそんな事を?
その疑問を視線でぶつける。
「さて問題です」
そう言って隆景くんはさっき紙をしまったポケットとは反対のポケットに手を入れた。
取り出したのはもう一つの、小さな紙。
「こっちの紙には何と書いてあったでしょう」
「……!」
さっきとは違う紙。
そこに借り物競走のホントのお題が…?
「…知りたい?」
「………」
クスリと笑う隆景くんの周りにはいつも通りに華が咲く。
その笑顔に目を奪われながら、私はコクリと頷いた。
「…どうぞ」
「え…いいの……?」
素直に渡してくれると思っていなかったので驚いてしまう。
折り畳まれた小さな紙は私の掌にあっさりと乗せられた。
「………た、隆景くん…これ、」
そこに書いてあった本当のお題。
「これ……っ!…!?」
その先の言葉を発する前に唇を塞がれた。
そう、彼の唇によって。