第34章 無双学園生徒会執行部。『September』(逆ハー)
「乗って!」
「えぇっ!?ホントに!?」
「早くっ」
急かされて言われるがまま乗った自転車の荷台。
「掴まってて!」
「う、うん!」
何処に掴まろうか少し迷って肩に手を乗せたら、
「違う!ここ!」
「あっ…!」
「しゅっぱーつ!!」
掴まる場所が違うと誘導された場所は豊久くんの腰。
ガッチリと腕を回すように引っ張られ、それと同時に顔や体も彼の背中に密着する形になってしまった。
自転車を走らせる間、運良く学園の生徒にも先生にも会う事はなかった。
さすが…!私の運…!!
て、そうじゃなくて…!
「豊久くんっ!…ど、何処に向かってるの!?」
「着いたらわかるよ!危ないからちゃんと掴まってて!」
辿り着いた場所は、電車では一駅隣の場所にある水族館。
大き過ぎず小さ過ぎずな水族館で学園の生徒達の定番のデートスポットでもあった。
「ちょっと待って、メール入れるから!」
「メール?」
「うん、竹中センセ」
「え」
豊久くんの口から飛び出した名前に私は驚いて口をポカンと開けてしまう。
そして確認の意を込めてもう一度聞いてみた。
「竹中先生って…保健のあの竹中半兵衛先生の事?」
「そう!あ、返事来た」
そう言って豊久くんは私にスマホの画面を見せてくれた。
そこには、
『了解。
だけど、貸し1ね~』
それだけ簡潔にサラッと書いてあった。
話を聞けば仲が良いらしい、物凄く。
確かに生徒にたいしてフランクに接する先生ではあるけど、サボりを認めちゃうなんて…!
「…了解って、もしかして私の事も」
「好きな子が元気なくて励ましたいから休むって送った」
「……え?」
「先輩、なんかいつもと違うから。嫌な事あった?」
「豊久くん…」
「だから!今日は楽しませる!島津の名に懸けて!」
…私を元気付けるために、豊久くんはここにいてくれているんだ。
いつもだったら今すぐ引き返して学校へ戻るんだろうけど、今日はそれをしたくなかった。
「行こうっ!」
「う、うん…っ」
彼の太陽みたいな笑顔が本当に私のモヤモヤを吹き飛ばしてくれるんじゃないかって思った。
ごめんなさい、お父さんお母さん。
今日初めて学校をさぼります…!!