第34章 無双学園生徒会執行部。『September』(逆ハー)
9月に入ったと言っても秋を感じるのはまだまだ先の様で、
「暑い………早くシャワー浴びよう…」
朝稽古の後は毎度汗だくです。
シャワー後はいつも通り生徒会室の掃除に向かう。
いつもの日常が私に戻った。
こうしているとあの夏の海での出来事が夢だったんじゃないかって思えてくる。
でも
「………っ」
そっと指で唇に触れる。
その途端にぶり返す三成先輩の唇の感触と熱。
それがやはりあれは夢ではなかったのだと私に伝えようとする。
「…随分と艶っぽい顔をしているね」
顔を上げると立っていたのは真田会長。
ボーッとしてて扉が開いた事に気付かなかった。
「お、はようございます…会長」
「おはよう」
にっこりと微笑んで会長は自分の席に着いて書類を広げる。
「あ…来月の体育祭の書類ですか?」
「あぁ、備品の確認のリストに目を通しておきたくてね……ねぇ、?」
「はい?」
「何を考えてあんな顔していたのかな?」
「……っ!」
「いや…誰を想って、と聞いた方が正しいのかな?」
「か、会長…!」
話をうまく逸らせたと思ったのに、更に核心を突く一言を言われ私の背中を冷や汗が伝う。
会長の視線は備品リストに向けられたまま、とても涼やかな顔だった。
「ここ最近の様子から見ると…相手は」
「…私!今日日直なので!先に失礼します!!」
脱兎の如く生徒会室を飛び出した。
もしあのまま聞いていたら、会長は誰の名前を出したんだろう。
そんなの、
絶対に平気な顔していられない。
「あっ…!」
「っと……!先輩?」
「豊久くん…ごめん、前見てなかった」
廊下を曲がった所で豊久くんとぶつかってしまった。
注意散漫、集中力も散漫。
これじゃ周りに迷惑掛けるだけだ。
「……先輩?」
「ごめん、なんでもないの…」
心配を掛けないように無理矢理に笑ってみる。
そのままもう一度謝って立ち去ろうとしたのだけれど彼はそれを許さなかった。
「豊久くん?」
彼はガッチリと私の腕を掴んでいた。
「先輩、今日は早退しよう!俺と一緒に!」
「え?え??えぇっ?!!」
状況が全く把握できないまま、私は豊久くんに引き摺られて校舎を後にした。